愉快な人生を生きるために~知識を知恵に~

経営や仕事への取り組み・社会心理学・生活の智慧に関する考え方、思い、提言をお伝えします

デザイン思考は、方法論か思考法か

「デザイン思考」という言葉を初めて 聞いた時、その魅力的な2つの単語の 組み合わせに心動かされました。

デザインという言葉は狭義には 「意匠」を、広義には「設計」を意味 します。

これが日本でややこしくなっている 原因で、広義のデザインという言葉 には、途方もないイメージの広がりが あります。

建築もデザインですし、組織のつくり 方もデザイン、ビジネスモデルも デザインです。

もっと身近で言えば、仕事の仕方も 人と人との関係づくりもそうです。

そこには効率が求められるのみならず、 「どのような状態を目指すか」という 成果のイメージが中心になります。

つまりデザインとは、何を達成したい のかを中心に発想するものです。 しかも創造性の匂いがプンプンします。

この「デザイン」という言葉に、 ロジックを想起させる「思考」という 言葉が合わさると、その広がりに 満ちた可能性に心動かされます。 デザイン思考に関わる文献を読んで いましたが、良くも悪くもIDEOが確立 した方法論が絶対的な存在として 表現されがちでした。

すなわち、デザイン思考とは、 ①ユーザーを観察し、②自由な意見を 表明し合う、③プロトタイプにして ユーザーに提示する、 ④そのプロセスを通して、新しい製品や サービスを完成させる、 というものです。

このIDEOの方法論は、それぞれが実に 魅力的です。

たとえば、ユーザーの観察では、一人の ユーザーの家にまで同行して、動作の 順番からユーザーの目線の動きまで つぶさに観察し、作り手が気づかな かったインサイトを得ようとします。

ここには観察者側のきわめて高い 認知力が要求され、そこから得られた インサイトを統合して多様な人が ディスカッションするプロセスは、 従来になかったダイナミクスを 感じます。

20160323_blog_sdt_img01

デザイン思考を方法論としてではなく、 従来になかった発想法として表現 できないか。 当初、この言葉のもつ響きに魅力を 感じたのは、新しい発想が生まれる 考え方が提示される予感があった からです。

たまたま読んだ『数学する身体』と いう本では、数学者である著者が、 数式を解くのは思考ではなく「計算」 だと表現し(つまり答えがある、 もしくは解けないことを証明する)、 解くべき課題を見つけることが 「思考」と表現し、「計算」と「思考」 を分けていたのが新鮮でした。 仕事の段取りなどを「計算」して いたり、問題の整合性を「整理」して いたりすることが多いのではないか。

ゼロから1を生み出す「思考」を どれほどしているか。 本当の意味での発想することの意味を 学びました。