愉快な人生を生きるために~知識を知恵に~

経営や仕事への取り組み・社会心理学・生活の智慧に関する考え方、思い、提言をお伝えします

目標ではなく、『今、この瞬間』に意識を向ける

瞑想によって、いっさいの判断をせず 「いま、この瞬間」をとらえ感じる のがマインドフルネス瞑想と言われる ものです。

いまやマインドフルネスは、集中力と 生産性の向上に有益だと科学的に証明 され、メディアを騒がすように なりました。

本来のマインドフルネスは、自己の 成長と洞察にまつわる伝統的な知恵 です。

にもかかわらず、いまではキャリア 形成と効率性向上のツールとして 私たちの文化に取り込まれようと しています。 果たしてマインドフルネスに特定の 目標、それも(効率性向上などの) 具体的な目標は必要なのだろうかと いう疑問が生じます。

1つの「状態」になるための行為を、 「行動のためのツール」と捉えて よいのだろうか。

マインドフルネスのブームを受けて、 米国中でこのプログラムを実施する 企業が増えているのは驚くに 値しません。

たとえばグーグルは、職場で マインドフルネス瞑想を教える 「サーチ・インサイド・ユアセルフ (自分の内面を探る)」という講座が あります。

ゴールドマン・サックス、ケーブル テレビ局のHBO、ドイツ銀行、 小売チェーンのターゲット、 バンク・オブ・アメリカを含む いくつもの企業が、生産性向上の 手段として従業員に瞑想を推奨して います。

マインドフルネスが有効であると 思いますが、瞑想に対する目的論的 な姿勢に違和感を覚えます。

瞑想が特定の目的のために つくられた「ツール」とされ、 「結果」を伴うものと見なされる ことに疑問が沸いてくるのです。 企業が実施するマインドフルネスの プログラムによって従業員の セルフケアが重視されるならば、 それはそれでよいことだと思います。

ただし、瞑想を別の観点から論じる 余地もある。

特に、仕事と瞑想の関連については 他にも考えるべきことがあると 思えます。

マインドフルネスを目標達成の ツールと見なすと、人は「いま、 この瞬間」への意識を拡張するより も、未来志向の考え方に囚われて しまいます。

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心理学者のクリスティン・ネフは、 「セルフ・コンパッション(自己 への慈しみ)」という言葉を考案 したことで知られています。

その主張によれば、 セルフ・コンパッションの第一の 要素は「自分への優しさ」です。 すなわち、To Doリストを全部 処理できなかった時などに 落ち込む気持ちを、吹き飛ばす 力です。

残り2つの要素は、 「普遍的な人間性への理解」、 そして「マインドフルネス」だと 述べています。

セルフ・コンパッションが目指す のは、より多くをやり遂げること ではありません。

「自分は十分に頑張っている」 「自分の価値は結果によって 決まるわけではない」と理解する ことだと思います。

(なお興味深いことに、ある研究 結果によれば、自分を許すことに よって物事を先延ばしにしなく なると言われています)

マインドフルネスについて語る際 には、慈しみ―特に自己への慈しみ が、もっと強調されるべきだと 思います。 たとえ企業の瞑想プログラムで あっても、それは同じです。

仕事の生産性を高めたいと思うのは 恥ずべきことではありません。

しかし同時に、職場で何かがうまく いかない時に、少し肩の力を抜いて 自分を慈しむことができるのも、 恥ずべきことではないと考えます。