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21世紀型「製造業のグローバル化」は、設計開発部門の変革から

製造業が「グローバル化」への対応を 本格的に求められるようになったのは 1980年代のこと。

国内市場が飽和状態に達する中で、 海外市場を開拓すべく従来国内市場 だけを対象としていた企業も積極的 に輸出に取り組みました。

90年代になると、今度はコスト削減を 目的とした現地生産のブームが訪れ ました。

円高という背景もあり、日本で製品を つくって輸出するよりも現地で 生産・販売した方が効率的な状況が 生まれました。

このように日本企業はグローバル化 への対応を迫られてきましたが、 最近の日本の製造業を取り巻く状況は 従来と異なっており、日本の製造業は 『マーケット』『技術』『人材』 の3つの視点において、従来と異なる グローバル化への要請にさらされて います。 まずマーケットを見るとこれまで 主戦場だった国内市場がすでに縮小 する傾向にあり、新興国のような 新たな市場で売れる製品の開発が 求められてきています。 技術面ではオープンイノベーション により国内外問わず従来の ものづくりとITやネットワーク 技術を融合させる流れができつつ あります。 さらには人材面では人口減少に伴う 国内エンジニアの減少や新興国に おける技術人材の増加が生じています。 20150908_blog1_f22fdaae5049912a6b04cc8c9884bc27

・設計開発部門のグローバル化 従来でも設計開発部門を海外に 立ち上げ、現地市場に対応した 製品を開発するという流れは 存在しました。

しかしこれから求められるのは、 国内・海外の区別なく、設計開発 部門をグローバルに最適配置する ことがポイントです。

たとえば、高度な技術を求めら れる業務は技術者のスキルが高い 地域に集約するといったように、 国際的な分業体制を構築すること が求められます。 設計開発部門では、拠点に技術者 を集約し、「すり合わせ」によって 価値を生むというビジネスモデルが 展開されてきました。

技術者の自由な発想が必要だと いう理由から、現場主導で物事が 決定する、ある意味ガバナンスの 効かない「聖域化」された状態に あります。

しかしこれでは技術者の持つ情報が 属人化され、共通言語がないために 他の技術者に伝承されないという 問題が発生します。

そのため、設計開発部門を グローバル化しようとしても、 現地で採用した技術者に開発業務を 教え込むことに時間がかかり、 その後マーケットが変化しても それに対応することができず、 結果的に身動きのとれない状況が 生じてしまうことになりかねません。

その中で日本の技術者は既存設計 の軽微な修正やそのテスト業務と いった、量産開発や派生開発の 中でも技術難易度が低く業務量の 多い仕事に多くのエネルギーを 費やしています。 この状況が続くと、将来的には 日本の技術者は海外技術者との 競争に迫られ、コストが高い分 日本人技術者は不利になると 考えられます。

こうした状況を打開するには、 設計開発部門のグローバル分業を 推進し、技術難易度が高く、 付加価値も高い研究開発や 次世代製品開発に日本の技術者の 業務をシフトさせる必要が あります。 まず日本の製造業に求められる のは、現在エンジニアが持って いる技術を「可視化」「共通言語化」 「ガバナンスの効いた状態」に することになります。

それにより、設計開発における 「聖域」が解体され、グローバル化が 進展するストーリーです。

量産開発や派生開発を『工業化』する 必要性とは、製造工程を工業化し、 人件費の安い工場で効率的に量産 してきたように、設計開発においても、 工業化できるものについては工業化を 進め、効果的に設計開発業務を 行えるようにする必要があります。

作業フローを明確化し、詳細な 手順リストを作成することなどにより、 明確な作業指示項目やマニュアルが できれば、従来共通言語化できなかった 技術が可視化され、グローバル化も進め やすくなると考えられます。 検索結果なし

・専門家の力を利用して「可視化」 を進める キーワードは、『プロセスの可視化・整流化』 です。

今は日本の技術者にニーズがあっても、 現在持っている技術はやがて コモディティ化し、価値を 生まなくなる可能性があります。 そうなる前にグローバル化の波と いう『外圧』を利用して、より 付加価値の高い業務へと日本の 技術者をシフトさせていくことが 重要です。

そのためにはマネジメント層が 率先して変革を進めていくとともに、 中堅の技術者が自らが現在行っている 開発業務にどのような価値があるのか をつねに考え、行動していくことが 必要です。

外資系製造業がASEAN市場向けの 製品開発の拠点を日本に置くなど、 世界的にも日本の技術者の ポテンシャルへのニーズは高く、 うまく競争力を高めていくことに よって、日本の技術者が高い付加価値 を生み出していくことが重要であると 考えます。