愉快な人生を生きるために~知識を知恵に~

経営や仕事への取り組み・社会心理学・生活の智慧に関する考え方、思い、提言をお伝えします

トヨタが伝承する「仕事哲学」(その2)

前回では、「動く」と「働く」の違い、 品質は、作業工程で作り込むことに ついて紹介しました。

今回は、現場・現物主義、行動主義に ついてです。

【「者」に聞かずに、「物」に聞く】 ここでの「者」とは「人」の ことで、「物」とは「現場」 「商品・製品」のことです。

現場で問題が発生したと部下の作業者 から報告を受けたトレーナーは、 その内容をそのまま上司に報告 しました。

するとその上司は、 「本当にそうなのか」と言って、 現場に直行。

そして、帰ってくるなり 「君が言っていることと現場の状況は、 違うじゃないか」と指摘しました。

人の言葉を信頼することは大切です。 しかし、人は何か失敗した場合には 自己防御が働き、100%正直なことを 言えなくなります。 さらには、報告自体も遅れがちです。 特に問題が発生した時には、 現地現物で確認することが重要 なのです。 20150819_blog1_img_dd6dd6d0ecdfbfde7050623dc42c8a1d152326

【「人を責めずに仕組みを責める」 ほうが合理的】 問題が発生した場合、「人を責める」の 考えに立つと、“気を付ける”“頑張る”と いう情緒的で個人やその場限りの対策 になりがちです。

これでは歯止めが弱く、問題が再発 しがちです。

一方で、「仕組みを責める」の観点に 立つと、仕組みにおける真因を潰しに いくので、より根本的な対策を取る ことができます。 これは、個人・場面・職場がかわっても 応用できる考え方なので、他部署に 横展開し(トヨタではこれを“横展 〈ヨコテン)”といいます) 組織全体を底上げすることができます。

問題が発生した部署にとっては問題の 再発防止ですが、他部署にとっては 類似の問題の発生自体を未然に防止 することができます。 20150819_blog3_113_1_l

【巧遅(こうち)より拙速(せっそく)】 「巧遅」とは、考え方としては 素晴らしいが、 実行までに時間が かかること。 「拙速」とは、出来栄えは今ひとつだが、 とにかく速いこと。

トヨタでは多くの場面で後者を好みます。

なぜ、内容以上にスピードを重視するのか。 それは、行動をしないと何も始まらない からです。 やってみて悪ければ、元に戻せばいい のです。

また、いったん簡単な改善をやって おき、より根本的な改善はそのあとに すればいいのです。

熟考していると、その間に状況は どんどん悪化し、あるいは、せっかく 練り上げたプランも現状に沿わないもの になっているかもしれません。

あるトレーナーは若い頃、上司から 仕事を命じられた時、 「できないと思います」と口にして しまったことがありました。

その度に上司から 「やってみてから言え!」と 叱られました。

一方で、やってみて失敗した時には、 失敗の真因や対策を一緒に考えて くれたと言います。 そうする中で、次第に失敗への恐怖心 がなくなり、自信をもってさまざまな 改善提案をできるようになりました。

誰しも、失敗は怖いものです。

しかし、何かよい案を思いついた時には、 とにかく行動することです。

行動することで、少しでも状況は前進 します。

より根本的な対策は、そのあとに 時間をかけて行えばいいのです。 次回は、具体的な改善のコツについて、 まとめてみたいと思います。