愉快な人生を生きるために~知識を知恵に~

経営や仕事への取り組み・社会心理学・生活の智慧に関する考え方、思い、提言をお伝えします

トヨタが伝承する「仕事哲学」(その1)

プリウスなどに代表される圧倒的な 品質や技術、あるいは「かんばん」 などの改善手法が注目されることが 多いですが、ものづくりの現場から 編み出された人材育成のメソッドに こそトヨタの強さの秘密があります。

【「動く」と「働く」では大違い】 職場のみなさんの周りの人たちを 観察してみてください。

慌ただしく歩いたり電話をしたりして いる人はいませんか?

その人たちは、一見、忙しく仕事を しているように見えるかもしれません。

しかし、実は本来は必要のないことを している、つまり、「付加価値」の ない動きをしている可能性があります。

ある部品メーカーでのエピソードです。

その現場では非常に多くの在庫があり、 通路も複雑に曲がりくねっていました。

そんな中で、鮮やかなハンドルさばき でフォークリフトを操る運転手が いました。 彼を見た管理監督者は、自慢げに このように言いました。

「彼はすごいでしょ?こんな運転 しづらい現場でも、常にペースを 落とさずにフォーク フトを操れる んですよ」

しかし、彼は荷物を右から左に 動かしているだけで、付加価値はゼロ。

在庫を圧縮できれば、運搬作業自体も なくすことができます。

トヨタでは、「動く」と「働く」は 全く別のものとされています。

「動く」は物理的に動作をしている だけで、そこに付加価値が加わって 初めて「働く」になります。 この定義でいうと、フォークリフトの 運転手の行動は、「動き」であって 「働き」ではありません。 みなさんの周りの忙しく仕事をして いる人も、実は「動い」ているだけで 「働い」ていないかもしれません。

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【品質は工程で作りこむ】 トヨタ生産方式の2本柱、 「ジャストインタイム」(必要な時に、 必要なものを、必要なだけつくる)と 「自働化」(異常があったら、工程や 設備を止める)には、各工程で生産 されるものは良品であるという前提が あります。 不良品が多く生産される工程であれば、 予定よりも多め・早めに生産しておく 必要があるので、納期が長くなり お金の流れも滞ります。

加えて、不良品を生産するための 原材料費・人件費もムダなものになる ので、利益も圧迫されます。 このように不良品は、Q(Quality=品質) C(cost=コスト)D(Delivery=納期) の面で、個人・組織の両方にとって 大きなハンデとなります。

効率的に仕事を進めるためには、 1人ひとりの担当者が自分の業務品質を 完璧なものにする、 つまり「品質は工程で作りこむ」 ことが必要条件となるのです。

次回は、現場・現物主義、行動主義に ついてまとめてみたいと思います。