愉快な人生を生きるために~知識を知恵に~

経営や仕事への取り組み・社会心理学・生活の智慧に関する考え方、思い、提言をお伝えします

本家にはない日本発CSVの深みとは?

日本をもう一度世界が羨む競争力の ある国にするためのカギになると 考えているのがCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造) です。

マイケル・ポーターが提唱した このコンセプトは、社会的価値と 経済的価値を同時に追求して両立 させることをめざすものです。

従来からあるCSR(Corporate Social Responsibility)とよく 比較されますが、CSRには社会的 責任を果たすために本来の事業 活動に付随して義務的に行うもの というイメージがあります。

これに対してCSVは、 本業そのもので社会課題を解決し、 利益もしっかりと生み出すという、 経営のど真ん中に据えるべき戦略 です。 アメリカで生まれたCSVが、なぜ 日本企業のグローバル成長を後押し するのかといえば、それは日本ほど CSVを実践する土壌に恵まれた国は ほかにないからです。

日本には昔から、 売り手よし、買い手よし、社会よしの 「三方よし」の精神が根づいています。 儲けのためだけに会社を興す企業家は 稀ですし、社員の多くも給料のため だけに働いているわけではありません。

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経営理念やミッション・ビジョン・ バリューなどという言葉を 持ち出さなくても、社会に 何らかのよいインパクトを与えたい、 よい仕事を通して顧客を喜ばせたいと いう意識が、上から下まで自然に あります。 これが日本の強みです。

ポーターの話では、経済価値こそが 最終的な目的で、それを実現する ための手段として社会的課題の 解決を位置づけているのが わかります。

正しい営利主義ではありますが、 ここに本家CSVの限界があります。

それに対して日本的経営では、社会的 価値を生み出すことが目的で、 それがきちんとできれば経済価値は 後からついてくると考えます。

どちらが戦略を遂行する現場をより 力強く動機づけるかは、わかりません。

日本企業のなかでも抜群の収益力を 誇る企業の1つに、キーエンスが あります。

同社はセンサーに特化して、 グローバルに成長し続けています。

IOT(Internet of Things)や 第4次産業革命(Industry 4.0)が 世界を席巻するなかで、 センサーはキーコンポーネントとして 位置づけられています。

そのキーエンスでは、利益率を 「お役立ち度」と読んでいます。

そして、その粗利は何と、80%以上。

これを暴利と見なすのではなく、 社会への貢献度の評価軸とする キーエンスの経営には、社会的価値と 経済価値を高いレベルで実現する 本来のCSVの姿を見ることができると 思います。

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ポーターに言われるまでもなく、 経済価値にもっともっとこだわる 必要があります。

そのためには、社会的価値を 利益に転換する力、すなわち儲ける 力を身につけなければなりません。 そうすることで生まれる日本企業 らしい、日本発の新しいCSVは、 本家CSVをはるかに凌駕する深さと 強さを得ることになると思います。