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「定石」を知らなかった秀吉が勝てた訳

囲碁では、自分の石で囲んだ領域が 自分の陣地になります。

したがって、より少ない石で領域を 囲むことができる碁盤の隅から 打ち始めるのがセオリーになって います。

ところが初めて碁を打った秀吉は、 最初に黒石を天元(碁盤の中央)に 置きました。

定石(じょうせき)は、もともと囲碁の 用語です。

さまざまな局面ごとに最善とされる 打ち手を指します。

最初に隅から打ち始めるのも定石の一つ だが、秀吉は定石など一つも知らなかった のだろう。

囲碁の経験者ならわかると思うが、 定石を知らないと、いとも簡単に負けて しまうものです。

しかし秀吉は、自らが天元に置いた石を 中心に、相手が打った石と点対称になる 場所に自分の石を打ち続けたそうです。

こうすれば、相手が定石どおりに 打ったのとまったく同じ手を、 一手遅れて自分も打つことができる。

相手が定石通りに打てば、秀吉は 同じ定石を打ち対抗できます。

こうして秀吉は、見事に勝ったと 言われています。

少なくともこの方法なら、相手の 知っている定石を学びながら互角に 戦えそうです。

なんとも賢い戦い方であることは間違い ありません。

ビジネスの世界にもさまざまな「定石」 があります。

書物などで優れた先人たちの 「経営の定石」を日々学びながら、 経営手腕を磨いている人も多いと 思われます。

ところが本書の著者の小林忍氏は、 「経営の定石」を深く考えずに 特効薬として用いることに警鐘を 鳴らしています。

本書には選択と集中」「ポート フォリオ経営」など経営戦略に 直結するもの、 「リーダーシップ」「俊敏な経営」 「現場主義」といった経営者の行動 指針のようなもの、さらに 「ワイガヤ」など現場の声を吸い 上げる方法論といった、多様な 「経営の定石」が取り上げられて います。

ただし、それだけではありません。

著者がこれまでの企業再生に携わった 経験を踏まえ、それぞれの 「経営の定石」を使ったがために 失敗した事例が、回避策とともに 詳しく解説されています。

選択と集中」はあまりにも有名な 定石で、かつ平易な日本語のため、 わかった気になりやすいと指摘して います。

考え違いや考察不足につながりがち だといいます。

つまり経営者が「選択と集中」の意味を 正しく理解していなかったり、曲解する せいで、さまざまな失敗が引き起こされて いるのです。

参考文献:『「経営の定石」の失敗学』 小林 忍 著 ディスカヴァー・トゥエンティワン 刊

最後までお読みいただき、ありがとうございました。